今回は、ICP−MSに使用する装置とその干渉等についてお話していきます
- ICP−MSで分析するときの装置の調整について知ることができます
- ICP−MS分析での各種干渉について知ることができます
上記2点についてお話していきます
ICP−MS分析装置を立ち上げて、プラズマを点灯させたあと、
プラズマが安定するまで、約30分暖機運転を行わないといけないです
暖機運転終了後、装置が安定していることを確認して、
イオン化部分、イオンレンズ、質量分析部分の調整を行います
調整する点は以下の4点について調整を行います
プラズマの位置
質量の軸
分解能
プラズマの中心と、サンプリングの相対位置を調整します
調整は、測定したい元素のイオンカウント数が最大になるトーチの位置に移動させることで行います
測定したい元素の質量数と質量分離部分のそれぞれの軸を一致させる調整をします
全質量の範囲について調整をすることが最もいい状態の調整となります
調整するためには、検量線を作製する時のように
低濃度、中程度濃度、高濃度の元素が入った、質量軸調整用の試料を準備します
この濃度が違う3つの試料を同時にモニタリングして調整を行います
四重極型質量分析系を使用している装置のときには、
測定している濃度に対して±8.3×10^−3 mol/L以下ほどの状態に調整することが必要になります
この数値が出るように、試料調製も正確に行い、また、慎重に調整を行う必要があります
質量がmの物質を分析したい時、この物質を分析したときの発光強度のピーク強度の5%高さの幅をΔmとすると、
この試料に対する分解能は、m/Δmと示すことができます
四重極型の質量分析計の分析装置の場合、それぞれの測定したい物質のスペクトルが
5.4×10^−2〜6.7×10^−2 mol/Lほどの範囲に収まるように調整を行うことで、分析精度を効率化することができます
ここからは、分析条件を決めるために気をつけるべき干渉についてお話していきます
ICP−MS分析で問題となる干渉は、スペクトル干渉とマトリックス干渉の2種類があります
スペクトル干渉とは
ICP−MSでは、スペクトル同士の重なりによる干渉が発生します
詳細についてお話していきます
同重体による干渉
分析したい対象の元素とその他の分析したい元素ではないものの阻害物質となる元素が
近い原子量である時、同重体イオン干渉が発生します
多原子イオン干渉
アルゴンガスによるプラズマをイオン化源として使用している時、
純水を試料導入部分から導入してもアルゴン系の複数種類のスペクトルが検出されます
試料の溶解等に硫酸を使用したと仮定して、硫酸を導入した時、
硫黄原子系統の多原子イオンが発生して、複数種類のスペクトルが検出されます
しかし、硝酸を、同じように導入した時、窒素原子系統のスペクトルが発生することはなく、
ほとんど純水を導入したときと同じような多原子イオンのスペクトルが検出されます
したがって、試料準備のために物質を溶解するために使用する酸は、硝酸を使うのが
最も干渉の影響を抑えて分析できる方法になります
分析したい元素が2つ以上の同位体を有する元素のとき、
それぞれの同位体の濃度かどう痛い比率を調べることで、スペクトル鑑賞があるかどうかを確認できます
分析したい元素の同位体比が天然の値と異なる検出結果になったときは、
何らかのスペクトル干渉を起こす元素が存在することが確認されます
分析したい元素に同位体が存在しない時、
酸や、マトリックス元素由来の多原子イオン等がスペクトル干渉をおこないかを確認する必要があります
多量に元素が存在する時、分析したい元素のイオンカウント数が減少します
これは、共存している元素と分析対象の元素との相対的な原子量の差が大きくなるほど顕著になります
原因として、イオンレンズ部分での空間電荷効果によるものであると考えられています
また、原子間の衝突による、発光強度等の低下による影響であるとも考えられています
今回は、ICP−MSの分析における調整の注目する点と
気をつけるべき、干渉についてお話していきました
干渉は、測定して数値が出る分、見逃して、
間違った分析結果を正しい値として使ってしまう可能性もある項目なので、
気をつける重要項目であるということを知っていただけたら嬉しいです
今回もありがとうございました
次回もよろしくお願いいたします